丸みを帯びたフォルム、籐で巻かれた持ち手……、この土瓶、いや急須、けっこう気に入っているものだ。ぼくは、紅茶を淹れるときによく使う。丸みを帯びているので、茶葉がポットの中で、よく回転してくれる。スクエアな形状だとこうはいかない。
なかなか、かわいいなあと思って眺めつつお茶を飲む。そして何より使い出があるのが自分にはうれしい。ものは眺めているだけでなく使ってこそ価値がある。ぼくはそう考える。
実はこれ、土瓶や急須ではない。
れっきとしたティーポットなのだ。
しかも、フィンランドの名だたる女性デザイナー、Ulla Procope(ウラ・プロコッペ)により1955年にデザインされたもの。いまから58年前、半世紀以上前のこと。
ウラ・プロコッペは、1948年から1968年までフィンランドの陶器ブランド、アラビア社で専属デザイナーをしていた。このポットはその時にデザインしたものだ。ウラ・プロコッペは、カイ・フランクに次ぐトップデザイナーとして多くの作品を手がけている。
親日家としてもよく知られているウラ・プロコッペは、何度も訪日している。
ここから先は、資料が手元にないので、もしかすると記憶ちがいかもしれないが、ウラ・プロコッペは来日した際に、各地の窯元を訪れ、陶器の見学をしていたということだ。そんなおりに、農家などの土瓶や急須に出会ったのではないだろうか。その感覚を元に、彼女はフィンランドに帰国後、このポットをデザインしたのではないだろうか。