2013年3月11日月曜日

土瓶? 急須? いいえ…… ARABIA Ulla Procope GA Tea pot


丸みを帯びたフォルム、籐で巻かれた持ち手……、この土瓶、いや急須、けっこう気に入っているものだ。ぼくは、紅茶を淹れるときによく使う。丸みを帯びているので、茶葉がポットの中で、よく回転してくれる。スクエアな形状だとこうはいかない。

なかなか、かわいいなあと思って眺めつつお茶を飲む。そして何より使い出があるのが自分にはうれしい。ものは眺めているだけでなく使ってこそ価値がある。ぼくはそう考える。

実はこれ、土瓶や急須ではない。
れっきとしたティーポットなのだ。

しかも、フィンランドの名だたる女性デザイナー、Ulla Procope(ウラ・プロコッペ)により1955年にデザインされたもの。いまから58年前、半世紀以上前のこと。

ウラ・プロコッペは、1948年から1968年までフィンランドの陶器ブランド、アラビア社で専属デザイナーをしていた。このポットはその時にデザインしたものだ。ウラ・プロコッペは、カイ・フランクに次ぐトップデザイナーとして多くの作品を手がけている。

親日家としてもよく知られているウラ・プロコッペは、何度も訪日している。

ここから先は、資料が手元にないので、もしかすると記憶ちがいかもしれないが、ウラ・プロコッペは来日した際に、各地の窯元を訪れ、陶器の見学をしていたということだ。そんなおりに、農家などの土瓶や急須に出会ったのではないだろうか。その感覚を元に、彼女はフィンランドに帰国後、このポットをデザインしたのではないだろうか。

 ウラ・プロコッペの作品は、きれいな色づかいや美しいものも多いが、土の持つやさしさ、素朴な風合いを活かしたものも多く、繊細でなおかつ重厚な感じの作品も多い。

 最初は、そんなことはまったく知らず、「この、でっかい急須なかなかいいよなあ」という感じで眺めていたものだ。だけど、「素性」が分かってからは、なにか遠いところで出会った親戚のように懐かしい感じがしている。住んでいる環境や、言葉は違えど、本当のこと、本当のものはひとつだということだろうか。