2013年1月17日木曜日

野原を味わう――春のお茶 杉菜茶 スギナ茶


よく杉菜のお茶を飲む。

少し喉がいがらっぽいときや花粉症のときなど、年間を通してよく飲む飲み物の一つだ。

杉菜は、近所に生えているものをいただいてきて、水で洗ってから笊(ざる)で天日干ししてよく乾燥させたものを茶葉として使う。そのまま冷凍庫に保管すれば半年以上持つようだ。

杉菜茶の入れ方は簡単。小鍋に湯を沸かし、沸騰したら茶葉を入れる。コップ1杯(200㏄程)に対して5g程度の茶葉がいいようだ。5分ほど煮立たせてできあがり。

鍋で沸かすとだんだんと鮮やかな緑色が鍋に広がっていく。杉菜そのものが染料になって染み出したみたいなきれいな色だ。

口に含むと、素朴なほんのりと甘くやさしい味が口中に広がる。まるで春の野で深呼吸をしているような気がする。そして、いがらっぽい喉や、違和感を覚えていた花粉症の息がすっと楽になっていく……。
 

 

小さな頃、父に連れられて野原に散歩に行き、あらかじめ節を抜いてある杉菜を指して、どこが抜けているか? という遊びをよくしてもらった覚えがある。

日当たりと風通しがよい、人の手が入った明るい土地を好むようで、そのような場所によく群生しているのを見かける。畑にもよく生え、よほど生命力が強いらしく、農家では難防除雑草(なんぼうじょざっそう=生えるのを防ぐのが困難な雑草)として敬遠される場合もある。
 
杉菜は古来、生薬として使われており、問荊(もんけい)と命名されて、利尿作用や腎臓病の薬として使われている。腎臓を患った友人は、摘んできた杉菜を強いアルコール(スピリッツ)にしばらく漬けたもの、チンキを毎日服用して、病気を克服したそうだ。それは、ネイティブ・アメリカンに伝わるやり方だそう。杉菜は日本だけに生育しているわけではなく北半球に広く分布している。

ネイティブ・アメリカンが、古来よりトリックスターとして崇め、敬愛しているイヌ科の動物、コヨーテも環境適応能力が高く生命力が強い。人類が絶滅しても生き残るであろうと言われているゴキブリと比較されたりしているほど。

コヨーテは、北米では駆除の対象となっているが、倍増するかのような勢いで増えているという話を先日聞いた。まるで、動物版の杉菜みたいだ。

何度、駆除しても、駆除しても、瞬く間にどこかからやってきて元気な姿を見せる自然のものたち。そんな、自然のものを利益にそぐわないからと駆除しようとする人間たち……。どこか、現代に起こっているさまざまな問題に通じるように思うのは自分だけだろうか。

自分たちは、その強い生命力に触れて、強い力を分けてもらうことしかできないのかもしれないが……。

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